障害者雇用促進法の改正(2023.4~)

制度解説

2023年4月より一部施行されている障害者雇用促進法の改正について紹介します。
今回の改正のポイントは以下の2点です。

①障害者の多様な就労ニーズに対する支援
②障害者雇用の質の向上

主な改正内容

(1)雇用の質の向上に向けた事業主の責務の明確化

第5条
全て事業主は、障害者の雇用に関し、社会連帯の理念に基づき、障害者である労働者が有為な職業人として自立しようとする努力に対して協力する責務を有するものであつて、その有する能力を正当に評価し、適当な雇用の場を与えるととおに適正な雇用管理並びに職業能力の開発及び向上に関する措置を行うことにより、その雇用の安定を図るよう努めなければならない。

つまり、事業主は障害者を雇用するだけでなく、本人の希望に応じたキャリア形成での支援も含めて障害者雇用を行っていくことが求められます

(2)雇用施策と福祉施策のさらなる連携強化

障害者福祉サービスで就労選択支援という新たなサービスが創設されます。
そこで就労能力や適性を客観的に評価し、本人の強みや課題を明らかにし、就労にあたって必要な支援や配慮を整理する就労アセスメントが実施され、その結果を参考にしたハローワークでの職業指導が公布後3年以内をめどに行われます。

またJEED(高齢・障害・求職者雇用支援機構)の業務における研修実施が明確化されました(2023年4月より)

(3)障害者の多様なニーズを踏まえた働き方の推進

★精神障害者の算定特例

週所定労働時間20時間以上~30時間未満の精神障害者について、当分の間、雇用率上、雇い入れからの期間等に関係なく、1カウントとして算定する特例が延長されます。
これは週20時間以上~30時間の範囲内で働く精神障害者が最も職場への定着率が良好だったという背景があるようです。

★短時間労働者の実雇用率の算定

週所定労働時間10時間以上~20時間未満の精神障害者、重度身体障害者、重度知的障害者について
特例的な取扱いとして、事業主が雇用した場合に雇用率において算定できるようになります。

これらをまとめると以下の表の通りです。赤字の部分が改正点です。

週所定労働時間30時間以上20時間以上
30時間未満
10時間以上
20時間未満
身体障害者10.5
重度身体障害者210.5
知的障害者10.5
重度知的障害者210.5
精神障害者10.5→10.5

(4)障害者雇用の質の向上

雇い入れやその雇用継続に関する相談支援、加齢に伴う課題に対応する助成金の拡充が予定されています。

その他、在宅就業障害者支援制度の登録要件の緩和や有限責任事業協同組合(LLP)の事業協同組合等
算定特例の対作法への追加などが2023年4月より行われています。

障害者雇用率の見直し

今後以下の通り段階的に引上げが予定されています。

R5年度
(2023年)
R6.4月~
(2024年)
R8.7月~
(2026年)
民間企業の法定雇用率2.3%2.5%2.7%
対象事業主の範囲43.5人以上40.0人以上37.5人以上