以前のブログでは、助成金と補助金の違いについて紹介をしました。助成金は雇用保険料が財源となっていますので、従業員を雇用していて雇用保険料を支払っていることが給付要件となりますが、従業員を雇用していない個人事業主の方も給付対象となるのが補助金です。
今回は個人事業主の方にも取り組みやすい、小規模事業者持続化補助金について紹介します。
1.小規模事業者持続化補助金とは?
小規模事業者が自社の経営を見直し、自らが持続的な経営に向けた経営計画を作成した上で行う販路開拓や生産性向上の取り組みを支援する制度です。販路開拓に必要な経費の一部を補助してもらうことができ、通常枠・特別枠いずれか1つの枠のみ申請が可能です。
類型 | 通常枠 | 特別枠 |
補助率 | 3分の2 | 3分の2~4分の3 |
補助上限 | 50万円 | 100万~200万 |
特別枠はその時の国の政策によって、新設されます。賃金引上げ・後継者支援・インボイスなどで、通常枠より補助率・補助上限が高く、追加要件が求められます。
補助金の申請にあたっては、商工会、商工会議所のサポートが必要になり、事業を営んでいる場所を管轄する商工会・商工会議所が受付窓口となります。
2.対象者は?
以下に該当する法人・個人事業・特定非営利活動法人が対象となります。
商業・サービス業 | 常時使用する従業員の数が5人以下 |
宿泊業・娯楽業 | 常時使用する従業員の数が20人以下 |
製造業その他 | 常時使用する従業員の数が20人以下 |
追加要件として、ざっくりと言うと、大企業の子会社ではないことや直近の事業年度の課税所得が15億を超えていないこと、以前もこの補助金を受けたことがある場合、一定期間を過ぎていることが条件となります。
3.どんな経費が補助対象となるのか?
新しいことを始めよう!という時に行う取り組みで発生する経費が補助対象となります。
①機械装置等費…製造装置の購入など
②広報費…新サービスを紹介するチラシ作成・配布、看板の設置など
③ウェブサイト関連費…ウェブサイトやECサイト等を構築、更新、改修するために要する経費(この経費単独では申請不可。補助金交付申請額の4分の1が上限)
④展示会等出展費…展示会・商談会の出展料など
⑤旅費…販路開拓を行うための旅費
⑥開発費…新商品・システムの試作開発費など
⑦資料購入費…補助金を受けようとする事業に関連する資料・図書など
⑧雑役務費…補助金を受けようとする事業のために雇用したアルバイト・派遣社員費用
⑨借料…機器・設備のリース・レンタル料
⑩設備処分費…新サービスを行うためのスペース確保を目的とした設備処分など
⑪委託・外注費…店舗改装など自社では実施困難な業務を第三者に依頼
内容によっては対象とならない場合もありますので、補助対象となるか十分に確認の上、計画を立てる必要があります。
4.申請から完了までの簡単な流れ
①申請の準備をする
公募要領を確認し、申請書類を準備します。作成した書類の一部は商工会・商工会議所窓口に提出し、その内容に基づく「事業支援計画書」を作成・交付してもらう必要があります。
②電子申請または郵送により提出する
③審査・採択結果が公表される
補助金事務局ホームページに採択された案件は公表がされます。採択された場合は交付決定通知書が通知されます。
④補助金対象の取り組みを実施する
交付決定通知書を受領した後に、対象となる取り組みを実施し、期限までに完了させます。
⑤実績報告書を提出する
補助金対象の取り組みの実施報告を期限までに提出します。
⑥審査確認⇒補助金額が確定
事務局にて実績報告に基づき、審査・確認が行われ補助金額が確定します。「補助金確定通知書」が送付されます。
⑦補助金の請求と入金
「補助金確定通知書」に記載された金額を確認し、指定された書式で請求を行います。請求から数週間後に入金されます。
⑧事業効果報告書を提出する
補助金対象の取り組みが完了して1年後に、決められた書式で事業効果報告を提出します。
留意すべきポイント
補助金は申請すれば必ずもらえるとは限らないということです。優秀な提案が「採択」されるコンペのイメージです。採択される確率は公募期間によって50%~90%で、バラつきがあります。また、補助金は後払いなので一旦は全額自己負担をする必要がありますので、資金繰りに注意が必要です。
5.公募期間
最新の公募期間はこちらをご確認ください。
6.申請書類の準備
申請書類の準備にあたり、しっかりと時間をとって計画的に進める必要があるものは①経営計画書と②補助事業計画書です。これらの資料に記載された内容が採択に大きく影響します。また、これらは地域の商工会・商工会議所窓口に提出し、事業支援計画書を交付してもらう必要がありますので、スケジュールに余裕を持って準備を進めることが重要です。
どんなことを書けばよいのか?
①経営計画書
記載する内容は大きく4つで、自分の営んでいる事業のプロフィールになります。
1.企業概要、2.顧客ニーズと市場の動向、3.自社や自社の提供する商品サービスの強み、4.経営方針・目標と今後のプランです。
慣れない言葉ばかりで一体何を書いたらいいんだろう…と手が止まってしまう方も多いかと思われます。
②補助事業計画書
ここに書く内容は(1)補助金を活用したい取り組みの概要と効果、(2)予定している経費の明細となります。
様式を見ると①と②の(1)でA4用紙2枚分ですが、欄外にこんなことが書かれています。
<経営計画>及び<補助事業計画>(Ⅱ.経費明細表、Ⅲ.資金調達方法を除く)は最大 8 枚程度までとしてください。
最大8枚…?!そんなに書けない…何を書いたらいいんだ…?!とびっくりされるかもしれません。採択されるには、審査員に「この取り組みはすごい!」「実現できたら世の中の人が便利になる」「このサービスで幸せになる人が増える」と思ってもらえるよう、未来への期待感を伝える必要があります。1つの項目につき、2~3行程度ではその期待感を伝えるのは難しいものです。わかりやすく伝えるため、図も交えた表現も効果的です。
しっかりと自分のこと・これからやろうとしている事業のことを伝えようと思ったら、それなりのページ数は必要になるものです。
7.事業を文書化するメリット
事業を行っていく上で、「こういうことをやっていきたい!」と頭の中で思い描いていると思います。それが存在するのは頭の中だけなので、自分だけが知っていることです。
それを文書という目に見える形にすることで、自分以外の誰かとの共有が進み、いろいろな人から共感を得られたり、協力者を増やすことにつながります。協力者が増えることで、確実に事業は発展していきます。
「補助金の申請をする」という取り組みは、自分の事業を見つめ直すきっかけとなります。自分のやっている事業を棚卸することで、新たな発見があるかもしれません。自分の得意なこと・強みや特徴を目に見える形にすることで、今後取るべき行動が見えたり、新しい挑戦をするきっかけになることもあります。
新しい挑戦をしていくために、ぜひ「補助金の活用」もご検討ください。
経営計画書・事業計画書の作成を支援します
中小企業診断士として当事務所で経営計画書・補助事業計画書の作成を支援します。補助金は受給が最終目的ではなく、自身の事業の成長を達成させることが最終目的です。
ご自身の事業の強みの発掘や目指すべき方向性、何に取り組んでいけばいいか?など一緒に考えていきます。
2022年度の中小企業白書においても、自己変革を進めるためには、支援機関との対話を通じて経営課題を設定することが重要と記されています。
まだ事業を始めたばかりの方、事業再構築として新しい取り組みに挑戦したいと思っている方、お気軽にご相談ください。